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時事ネタ

第16号 給与所得扱いで税率3倍に!恐ろしきストックオプション税制 NEW 


<納税通信第3777号1、2面引用>

 

 節税しつつ成果報酬制度を導入できる仕組みとして注目を集めている「信託型ストックオプション」を巡り、国税庁はこのほど最大税率55%に上る「給与所得」として税務処理すべきとの見解を示した。   

 これまで企業側が「譲渡所得」として想定していた20%をはるかに上回る税率が課されることになり、導入済みの企業に波紋が広がっている。もっともストックオプションには信託型以外にもさまざまな種類があり、一定の条件を満たしていれば税率を20%まで低減可能だ。ストックオプションの仕組みや種類を確認し、税務上のリスクや今後の利用価値を見定めておきたい。


 ストックオプション(SO)とは、あらかじめ決めた価格(権利行使価額)で株式を購人できる権利のこと。企業の成長により株価が上がったタィミングで権利行使・株式売却すれば利益が得られるため、資金力が乏しいスタートアップ企業などが優秀な人材を確保するための"成果連動型の報酬制度"として役員や従業員に付与している。米国のスタートアップ企業が1990年代に導入したことをきっかけに世界的に広まり、日本では97年の商法改正によって解禁となった。

  SOの利用価値は企業の成長度合いに比例して高くなる。仮に従業員が1株100円のSOを受け取ったとすると、その企業が成長し株価が1000円になったタィミングで権利行使・株式売却をすれば差益の900円を事実上の報酬として受け取れるというわけだ。

 ストックオプションの種類は大きく分けて「有償ストックオプション」と「無償ストックオプション」 に分類され、さらに無償ストックオプションは「税制適格ストックオプション」と「税制非適格ストックオプション」に分かれる。権利行使時の課税ルールの違いを見てみると、有償SOと税制適格SOでは譲渡所得として税率20%が課される一方、税制非適格SOは給与課税の対象となり最高税率は55%になる。


人気の新スキ—ム税負担が膨大に

 現在問題になっているのは、近年利用されるようになった「信託型ストックオプション(信託型)」 という新スキームだ。これまで多くの企業は「譲渡所得」の税率20%が適用されると想定していたが、国税庁が5月30日に公表した文書の中で、「信託型の行使は給与課税にあたる」との見解を初めて公式に発表した。国税庁の公表通り給与所得となれば累進課税で最大税率は55%に上ることになり、役員・従業員らの税負担は従来の認識と比べ最大2.75倍に膨らむ。

 信託型の特徴は、企業価値が低い成長初期の段階のSOを信託会社にプールしておける点にある。従来のSOでは企業の成長に応じて価値が上がるため、企業が成熟してから入社した役員や従業員らは最初から価値の上がったSOを受ることになり利益を得づらい。一方、新たに利用されるようになった信託型では企業価値が低い時期のSOを受け取れるため、入社時期にかかわらず同等の利益を得られるというメリットがある。2014年に民間のコンサルティング会社と弁護士が考案したスキームで、現在では約800社が利用している。


課税ル—ルの認識 企業・当局で深刻な差

 信託型の権利行使時の課税ルールはこれまで明確にされていなかったため、企業側と国税庁側に決定的な認識の違いが生まれていた。信託型の課税ルールを巡る企業側の見解は、税率20%の譲渡所得が課される「有償ストックオプション (有償SO)」にあたるというものだ。信託型では権利行使時に役員・従業員らに購入費用は発生せず、代わりにオーナーが資金を拠出した段階で法人課税信託の課税ルールにのっとって法人税を納付する。

 そのため、国税庁の見解通りに役員・従業員に対しても給与課税するとなれば、 オーナーと役員・従業員の両方に税負担が発生してしまうことになり、二重課税に抵触するおそれがあるという理屈だ。

 一方、信託型の課税ルールを巡る国税庁側の見解は、最高税率55%の給与所得が課される「税制非適格ストックオプション(税制非適格SO)」にあたるというものだ。税制非適格SOとは、無償で発行されたSOのうち、税制優遇が適用される一定の要件を満たしていないものを指す。信託型では信託というクッションをはさんでいるものの、実質的に役員・従業員らが無償でSOを取得していることから、会社からの報酬である給与として課税すべきとの認識だ。

 譲渡所得と給与所得では税負担の差は歴然だ。仮にSOを行使して得た株式を売却して5000万円の利益を得たとする。譲渡所得だと税負担は約1000万円で済み手取りは4000万円ほどになるが、一方で給与所得になると税負担はおよそ2750万円に上り手取りはわずか2250万円程度にまで減ってしまう。

 企業側と国税庁側の認識の違いが生み出した間題は、国会でも取り上げられる事態となっている。5月31日の衆院経産委員会では、日本維新の会の足立康史議員が信託型を導入した企業と推進した企業との間で民民訴訟に発展しかねないとし、さらには「国税庁だって訴えられるかもしれない」と指摘した。これに対し国税庁の植松利夫官房審議官は、「民民、あるいは国税当局との聞で訴訟に発展する可能性は一般論としてあり得る」 と訴訟沙汰になる可能性を否定はしなかったものの、「企業側から問い合わせがあったときには従来から給与課税される旨の回答を行っている」と、 これまでの認識は曲げない構えだ。国税庁は一貫して「従来から見解が変わったわけではない」としており、信託型については徹底して給与課税を適用していく方針だ。すでに権利行使し譲渡所得として申告していた人は追徴税が課される事態に陥る。もっとも、国税庁によるとこれまでに信託型を導入した企業約800社のうち、すでに権利行使があったのは20数社程度にとどまる。その他の権利未行使の企業には、税制上で優遇された「税制適格SO」への移行を推奨している。


新ルールを整備 税制適格SO普及へ

 国税庁は税制適格SOの推進に向けたルール整備に着手している。5月30日には、これまで税制適格SO適用のハードルになっていた株価の算定ルールを見直すための意見公募を開始した。6月29日まで意見を受け付け、 その後は関連する租税特別措置法の通達改正に着手する方針だ。

 税制適格SOにはさまざまな要件があり、中でも権利行使価格については 「SOを付与するときの株価以上」と定められているため、株価算定が困難な非上場企業にはハードルが高かった。株価を低く設定できれば権利行使時の価格との差で役員・従業員らが受け取れる報酬額が増えるが、課税当局に株価が不適当と指摘されてしまえば税制優遇が受けられなくなってしまうリスクがあるためだ。

 そこで新ルールでは、これまであいまいだった非上場株式の算定ルールを整備し、原則として純資産を株式数で割った額を時価の最低限度として設定できるようにする計画だ。これにより低い時価を設定しやすくなり、 ストックオプションで得られる役員・従業員らの利益を最大限まで確保できるようにする。国税庁は改正案に寄せられた意見をとりまとめ、 7月中をめどにルール改正する構えだ。税制適格SOを利用しやすくなれば、キャッシュが少ない非上場企業でも優秀な人材を集めやすくなる。SOを巡る新ルールがどのような形で決着するのか、要注目だ。                                      

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谷の私見
 上場を目指されている企業にとっては、ストックオプション(以下、SO)は必ず検討する事項の1つかと思います。通常は、税制適格SOを採用する企業がほとんどだと思いますが、上記に記載があるとおり株価が上昇してからSOを受け取った社員にとってはあまりうま味の無いSOになりかねないので、民間企業がこのようなスキームを開発したようですね。課税関係がはっきりしていないスキームは常に税務リスクが付きまといますので、採用する企業側もチャレンジングな選択をする場合はよくよく注意しましょう。


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