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<所長のミカタ 2022年12月号 7面>
消費税のインボイス制度導人を見据え、免税事業者である取引先に対して、課税事業者への登録変更を要請する事例が増えている。
だが免税事業者の約6割は資金繰りの悪化や利益の減少など深刻な影響があるとして二の足を踏んでいる状態で、課税事業者への変更を強要されれば「廃業を検討せざるを得ない」との声が急増している。
インボイス制度の開始まで1年を切ったいま、免税事業者との付き合い方をしっかりと考えておく必要がありそうだ。
2023年10月から、インボイス制度がスタートする。制度の導入後は事業者の登録番号や税率ごとに区分した消費税額などを記載したインボイス(適格請求書)の保存が消費税の仕入税額控除の要件となる。そのため、インボイスを発行できない未登録事業者からの課税仕入については、原則として消費税の控除を適用できなくなる。
とりわけ、免税事業者についてはインボイス登録事業者となる申請そのものが不可能となっていることから、免税事業者との取引では仕入税額控除ができなくなり、発注者は従来よりも消費税分だけ”損”をすることになる。
インボイス制度開始後の免税事業者との取引について発注者には、
①仕入税額控除を諦めて消費税分の負担を受け入れる、
②消費税分の値下げを求めて価格交渉を行う、
③インボイス制度に登録できる課税事業者への転換を促す、
④取引をやめてインボイスを発行可能な新規仕入先を探す
と大きく分けて4つの選択肢がある。
インボイス制度の開始まで1年を切ったなか、発往者の間では、「③課税事業者への転換を促す」取り組みが広がりつつある。
日商の調査では、免税事業者の過半数(53・4%)が取引先からの要請などを受け入れて課税事業者へ転換する意向を固めている一方で、新たに消費税を納めることによるコスト負担や事務処理などについて様々な課題が挙げられている。また同調査では、課税事業者への転換がやむなしとなれば「廃業を検討する」との回答も4.2%に上った。免税事業者をとりまく状況については各種団体からも指摘が相次いでいる。
日本税理士会連合会は、今年6月に公表した「2023年度税制改正に関する建議書」のなかで、免税事業者に重大な影響が及ぶとしてインボイス制度の見直しを提言した。
免税事業者がインボイスを発行できない仕組みについて「対事業者取引から排除されることや消費税等相当額の値下げを強いられ、廃業を余儀なくされる事業者が増える」と指摘したうえで、「事業者の負担等を考慮し、仕入税額控除方武の抜本的な再検討をすべき」と求めている。
また立憲民主党も、インボイス制度の廃止法案を今年3月に提出した。同法案では、「零細事業者にとってインボイスに関する書類の発行や保存は大きな負担となり、さらに対応できない事業者は取引から排除されたり、値下げ圧力を受けたりしかねない」と指摘している。また、フリーランス人材への影響が特に大きいとして、|所得の引き上げを目指す岸田政権の『新しい資本主義』と矛盾する」と批判した。
実際、インボイス制度導入に反対する声優の有志グループ「V0ICTION」が9月に声優の収入実態調査を実施したところ、「インボイス制度が実施された場合、声優としての仕事はどうなるか」との問いに対し、「廃業を換討する」との回答が23%にも上った。インボイス制度を機に、免税事業者との取引をどう見直していくべきか、判断の猶予期間はそれほど残されていない。
来年10月の制度開始にあわせてインボイスの発行事業者となるには原則として来年3月までに登録を終える必要があるためだ。制度開始後には、免税事業者との取引であっても一定額まで消費税の仕人税額控除ができる経過措置が設けられているものの、当然ながら徐々に減額される。2026年9月までの3年間は80%、29年9月までは50%が上限だ。29年10月以降は、免税事業者からの仕入について、一律で控不可能となる。
インボイス制度には依然として反対の意見が根強いが、制度開始まで1年を切った今、好むと好まざるとに関わらず対応が迫られている。免税事業者との取引をどうしていくか、具体的な判断を下してインボイス制度に備えたい。
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