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時事ネタ

第11号 今年の確定申告からスタート!                 300万円副業通達改正でこう変わる


<月刊所長のミカタ 2023年3月号 8面引用>

 2022年に大きな話題を集めたのが、年収300万円以下の副業問題だった。副業での所得区分について、国税庁は昨年8月、「年300万円以下は雑所得とする」との通達案を公表した。これは事業所得か雜所得か雑所得か、あいまいだった線引きを明確にするためのものだったが、反対意見が殺到し、国税庁は内容を大幅に変更することになった。

 また10月にインボイスが導入される消費税をはじめ、税制の様々な変革と歩調を合わせるものとの指摘もある。今年の確定申告から適用される新ル—ルにつき、電子保存の義務化なども意識しつつ、しっかり考察しておく必要がありそうだ。


 国税庁が昨年8月に公表した通達案では、年収300万円を超えない副業は原則として「事業所得」と認めず「雑所得」として扱うとの方針を打ち出した。具体的には、副業の年間収入(売上) が本業(給与所得など) よりも少なく、かつ300万円以下なら雑所得にするというものだ。

 これによって事業所得の特典とされていた最大65万円の青色申告控除などが使えなくなる。さらに雑所得では赤字でも他の所得との損益通算は認められない。

 税法上、所得は給与所得や事業所得、不動産所得など10種類に区分され、雑所得は他の9種類の所得のどれにも属さない所得を指す。これまでも副業の所得区分については「事業所得」か「雑所得」に該当してきたが、その境界線は必ずしも明確ではなく、税務処理をめぐって納税者と税務署が争うことも少なくなかった。

 今回のパブリックコメントには通常の70倍にあたる約7千件の意見が寄せられ、当局は大幅な修正を余儀なくされた。10月7日に公表した修正案では、「所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存すれば事業所得にできる」としている。300万円という金額で線引きするのではなく、帳簿の有無で区分するとしたものだ。事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」とし、所得区分については金額の有無ではなく、最高裁判例の基準をあてはめて判断すると明記している。

 所得税法と同法施行規則では、雑所得に関係する収入金額が300万円を超えれば、総収入金額や必要経費に関する事項を記載した「現金預金取引等関係書類」を5年間保存しなければならないと規定している。つまり収入金額300万円以下の小規模な業務を営む者には、取引に関する書類の保存を求めないこととされているわけで、この点が、「収入金額300万円基準」の論拠となっているようだ。

 ここで気をつけたいのは、修正案には帳簿書類がそろっていなければ、「例外なく」事業所得に区分するとはどこにも書いていないということだ。国税庁は帳簿書類があっても概ね過去3年間の収入金額が300万円以下かつメインの収入の10%未満、または毎年赤字で赤字を解消するための努力をしていなければ、事業所得と認めるかどうかを個別に判断するとしている。ほとんどのサラリーマンはこのいずれかに該当することになり、事業所得として扱えば否認される可能性も否定できない。

 日本税理士会連合会の税制審議会は昨年12月末にまとめた答申のなかで、「副業や兼業に係る所得は比較的小規模な揚合がほどんどであり、営利を目的として継続的に行っていたとしても、所得区分上は、事業所得ではなく雑得とされるケースが多い」とし、適正な記帳を行っていたとしても青色申告は認められないことから、「青色申告特別控除が適用されないほか、その損失について他の所得との損益通算や損失の繰越控除は適用できず、青色申告者に与えられている各種の税額控除等の租税特別措置の恩典を享受することもできない。これらの取り扱いは、スタートアップを支援する税制とはいえない」と苦言を呈している。


再び注目される不動産投資

 国税庁による通達改正の背景にあるのは、会社員による副業を利用した極端な節税スキームの存在だ。事業所得として副業で赤字をつくるほか、副業と全く関係のないものまで経費計上して申告し、本業所得と相殺して税金の還付を受ける人が続出した。今回の改正で当局は一定の修正を余儀なくされたものの、赤字副業を利用した節税スキームへ歯止めをかけるという目的は達したと言っていいだろう。

 そのため、国税0B税理士の一人は「赤字節税への対処であるため、副業が赤字となっているときは当局に狙われるリスクが今後さらに高まる。副業の赤字化は控え、赤字になったとしても単年度に抑えたい。赤字が3年を超えて続いているような状況では、間違いなく電話やお尋ね文書などで確認してくるはずだ」と予測する。

 そして副業でもうひとつ注意しなければならないのが消費税についてだ。経営者にとっては1千万円を超えれば消費税の課税事業者となるのは常識だが、「給与所得者は消費税を納める意識が希薄ゆえに自分が納税義務者となるとは思いもしない人も多い」(同)という。

 一方、300万円以下が雑所得とされる新ルールの裏で注目されているのが、不動産投資だ。賃貸不動産であれば雑所得とされず、損益通算などが認められる不動産所得として扱われるからだ。

 副業についての新ルールは今年の確定申告からスタ―トしている。さらに消費税のインボイス制度導入が10月に迫り、その3か月後には電子取引データの電子保存義務化が待っている。さまざまな状況を複合的に捉え、今回の副業通達も考えていきたい。 

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谷の私見
 副業・兼業に関する質問は結構たくさんいただきます。そもそも、お勤めの会社で副業が禁止されている場合は当然ダメですが、副業に関する規制が緩い会社も最近は多く見受けられます。特にコロナ渦で工場などにお勤めの方で一時的に業務停止などで休業せざるを得ないような時に副業が盛んになったようです。一般論で考えれば、給与の金額が一定額ある場合、副業部分について「事業所得」である、とは言えないと思います。将来、独立することを考えて準備していて、経費が多く赤字になってしまっているような場合は仕方ありませんが、それ以外はやはり副業にすぎないので雑所得になるでしょうね。

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