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時事ネタ

8号 2023年度 税制改正大綱


<2023年1月2日付 納税通信 第3754号 4,5面>

 2023年度の与党税制改正大綱が12月16日に決定した。今年の大綱は防衛増税、贈与税の大改正、電帳法やインボイスへの準備にかかる措置、さらには人気の節税スキー厶の規制と盛りだくさんだ。

23年度大綱で経営者が確認しておきたい主な改正項目について取り上げる。


〇個人関係 生前贈与

相続時精算課税ががぜん有利

110万円贈与の「持ち戻し」の期間が、3年から7年に延長される。これにより、相続前7年間に相続人に対して渡した贈与財産が、相続税の対象に持ち戻されることとなる。同時に税負担を軽減する措置として、

延長した4年間に関しては総額100万円の控除枠を設ける。もう一つの課税方式である相続時精算課税は、大幅に拡充された。これまでは制度適用後に都度必要だった少額贈与が、年110万円については

相続発生時に持ち戻しの対象とならない。今後、同制度を適用するケースが大幅に増加するとみられる。また相続時精算課税については、贈与時の価額で相続税を計算するが、贈与後に災害などによって価値が

下落していても税額に反映されないというリスクがあった。今回の大綱ではこの点について、災害で被った損害については価額から差し引くよう改められた。これらの改正は24年1月の贈与から適用される。


<谷の私見>

「持ち戻し」については、令和9年から順次延長されます。そして、加算期間が最長7年になるのは令和13年以後からとなります。

順次延長されていく、という部分がややこしいので、具体的にどのように贈与のプランニングをしていけば良いか、税理士とよく相談して進めてください。

また、相続時精算課税の基礎控除110万円は吉報で、例えば父からは暦年贈与、母からは精算課税贈与を受ける、となると基礎控除額は

220万円と増加します。さらに、精算課税制度は相続時に相続税に持ち戻されますが、「贈与時の時価」となる部分がミソです。つまり、贈与時に価格を低く抑えられる資産であれば精算課税制度を利用することで節税が可能となります。


〇個人関係 一括贈与の非課税特例

延長されたものの富裕層に厳しく

1500万円までの教育資金の一括贈与を非課税にする特例について、23年3月末を期限としていたところが3年間延長された。ただし同時に要件が厳格化され、受贈者が要件が30歳に達して残額に贈与税が課される場合、

家族向けの特例税率ではなく、高い一般税率が適用されるようになる。また、贈与者の相続税の課税価格が5億円を越えるよぅな富裕層であった場合、たとえ受贈者が23歳未満であっても、相続税への持ち戻しの対象となる。

結婚・子育て資金の非課税特例も2年延長される。こちらも受贈者が年齢上限に達したときには、一般税率を適用することとなった。


<谷の私見>

教育資金の贈与は元々非課税です。例えば、皆様が親に出してもらった学校の費用は贈与税が課せられましたでしょうか??そんなことないですよね。なので、教育資金はそもそも非課税です。では、なぜこのような制度があるのかというと、シンプルに言うと「その都度」か「まとめて」か、ということになります。その都度上げるのであればそもそも非課税なのでこのような制度は利用する必要がありません。しかし、一括してまとめて渡したい場合はこの制度の利用が必要となる場合があります。是非、根本の部分を改めて考えてみてください。


〇個人関係 超富裕層課税

増税のターゲットは数百人どまり

収入に占める金融所得の割合が多いリッチ層ほど実質的な税負担が低い「1億円の壁」を是正するための一歩として、超富裕層に対する増税を行う。実際の納税額が、「合計所得から3.3億円を控除した金額×22.5%」を下回る場合、

差額分を追加で課税する。その際に、スタートアップに再投資するために生じた株式譲渡益などは控除するルールも設け、再投資を促す。

実際に税負担が増えるのは年間所得30億円を超えるような層だといい、全国に200~300人とみられる。


<谷の私見>

私含めて、一般人にはあまり関係のない制度ですね・・・。


〇個人関係 不動産売却の譲渡所得 

空き家と低未利用地税優遇を延長

相続した空き家を売却したときに最大3千万円を譲渡所得から差し引ける特例の適用期限が4年間延長された。ただし不動産を所得した相続人が3人以上いると、控除上限額が2千万円に引き下がる。

また、低未利用地を売却したときに長期譲渡所得から100万円を差し引ける特例についても、3年間延長されている。さらに土地が所有者不明土地対策計画が作られた市町村にあるなど一定の要件を満たすと、

現行500万円以下とされている譲渡価格要件が800万円まで引き上げられる。ただし同時に、低未利用地からコインパーキングを除外するという条件の厳格化が行われた。


<谷の私見>

相続による不動産登記の義務化と併せて、日本にある未利用の不動産を有効活用し、そしてしっかり管理したいという国の思惑ですね。

ただ、納税者も未利用の不動産を所有していても固定資産税はしっかり課税されますので、是非一度、遊休資産の見直しをしてみてはいかがでしょうか。


〇個人関係 NISA

ついに恒久化 生涯投資額1800万円

これまで「一般NISA」と「つみたてNISA」に分かれていた仕組みを一本化し、制度も恒久化された。年間投資上限額は、「つみたて投資枠」が現行のつみたてNISAの3倍の120万円に、

新たに設けられる「成長投資枠」では現行の通常NISAの2倍の240万円に増額され、トータルで年間360万円の投資が可能となる。

併せて、懐の余裕がある富裕層に有利になることを踏まえ、生涯における1800万円の投資上限額を設ける。


<谷の私見>

NISAと比較されるものとして「iDeCo(イデコ)」がありますが、実は私はNISAはやったことがなく、iDeCoはこれから始めようと思っています。

というのも、私自身あまり投資が得意ではなく(勉強不足ということもありますが・・・。)積極的に運用をして増やしたい、という意志があまりないのです・・・。

であれば安全な商品でプロが運用してくれるイデコのほうが向いているな、と考えたからです。あらかじめ言っておくと、NISAを否定するつもりは全くありません。

ただ、購入、売却、どの銘柄、為替、有価証券以外の運用商品との比較(金などの現物資産)を検討するのが面倒なだけなんです。

そういう人はNISAはあまり向いていないのかもしれませんね。


〇個人関係 タワマン節税 

「適正化を検討する」

市場価格と相続税評価額のギャップを利用した、いわゆる「タワマン節税」について大綱では、「現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある」

と見直しの必要性に言及した。その上で、「時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と明記した。

具体的な見直し内容については示されなかったものの、大綱のうち末尾に付け加えられる「検討事項」ではなく、今年度税制改正の「基本的考え方」に記載されていることから、

近々に何らかの対策が取られることはほぼ既定路線といっていいだろう。


<谷の私見>

タワーマンション購入自体がダメということではなく、前後のストーリーが大事だとういことです。

裁判で納税者側が負けた理由は、その前後の流れが不自然だったということです。つまり、親がキャッシュ(仮に1億円)を持ったまま相続が発生すると1億円に対して相続税が課せられます。

しかし、タワーマンションの高層階などは1億円の物件だとしても、相続税評価額は2000~3000万円(実際は物件により固定資産税評価額が変わります)になることがあります。

親がキャッシュでななく、タワーマンションを購入して子供へ相続し、子供がそれを相続後すぐに売却(同額の1億円とします)すると、相続税の評価の時だけ評価額を低くすることで不当に相続税を逃れる、

ということが可能になります。なので、子供がタワーマンションをずっと持っている場合(自分がそこに住んでも結構です)は問題ありません。タワーマンションに限らず、その他の不動産も少なからずそのような現象

(購入価額>相続税評価額)が起きますので、それらが全部否認される訳ではない、ということです。


〇個人関係 防衛費の財源

1%の付加税新たに導入 復興税は延長へ

防衛費増額のための財源として、所得税に新たな1%の付加税を導入し、同時に復興特別所得税を引き下げる。当初は復興特別所得税をそのまま防衛財源に充てる案が検討されていたが、

十分な議論を経ずに復興財源を防衛費に転用することに対しての猛反発を受け、体裁を整えた形だ。復興特別所得税の1%引き下げに合わせで、期間は明言されていないものの「復興事業の着実な実施に影響を与えないよう」延長することも盛り込んだ。


<谷の私見>

あくまで個人の意見ですが、防衛費を増やしても戦闘機や武器を購入する先はアメリカで、結局アメリカにお金が行っているような気がしますが気のせいでしょうか。(根拠はありませんので、本当に個人の見解です・・・。すみません。)



〇企業・個人 ”脱税相談”を規制

停止命令を可能に 100万円の罰金も

税理士資格を持たずに税務相談を請け負い、脱税をそそのかす悪質なコンサルタントへの罰則が強化される。不正な税逃れを指南したり、税の不正還付を指導したりする活動が納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼし、

それが「 防止するため緊急に措置をとる必要がある」と認められたときには、国は税務相談の停止を命じ、また停止が実効的に行われるための必要な措置を講じられるという。国税庁はこの命令をすべきか同課の調査を行い、

税務相談を行ったものへの質問、帳簿書類の検査を行う。停止命令に応じない場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。


<谷の私見>

そもそも税の相談は無償独占で、無償であっても無資格者がアドバイスしてはいけないことになっています。でも、実際は無資格の方(金融機関、その他コンサルタント)がアドバイスしていることも多く、どこまで厳しく取り締まるかという問題もあります。こちらの記事は脱税アドバイスなので当然アウト!で今までが緩かっただけだと思います。


〇企業関係 中小企業税制

コインランドリーとマイニング節税を規制

中小企業を対象とした税優遇である法人税の軽減税率、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制がそれぞれ2年延長された。ただし近年、コィンランドリーや仮想通貨のマィニングへの投資に税優遇を適用し、

大きな節税効果を上げている例があったことから、中小企業投資促進税制の対象からコインランドリー業を、中小企業経営強化税制の対象からコインランドリー業と暗号資産マイニング業を除外することを決めた。

どちらも主要な事業として行っているものは制度を適用できる。


<谷の私見>

なんだか「いたちごっこ」のような気もしますが、対象設備を限定してもまた新たな投資設備を考えだしそうな気もしますが・・・。

一方で、本来の経営力を向上させる設備を導入する企業にとってはとても有難い制度で、中小企業を応援してくれているのがよくわかります。対象設備の線引きが難しいですね。


〇企業関係 設備投資の税優遇

税金ゼロは終了も減免特例は2年延長

23年3月が期限となっていた、中小企業の設備投資にかかる償却資産税の優遇について、縮減の上で延長されることが盛り込まれた。新たな期限は25年3月末となる。これまで同制度は一定の生産性向上の要件を満たす

設備投資について、償却資産税を3年間ゼ口にするものだったが、延長後は課税標準を2分の1に引き下げる内容に改められる。ただし1.5%の賃上げを行った企業は、最大5年間、課税標準を3分の1に引き下げることが可能だ。


<谷の私見>

経営強化法による設備投資が対象で、法人税の減額(税額控除又は特別償却)だけでなく、償却資産税(地方税)についても減免してくれる制度です。

有難い制度なので、設備購入の際、経営強化法が適用されるかどうか、顧問税理士さんにご相談してみて下さい。


〇企業関係 インボイス

中小事業者に2つの救済措置

23年10月にスタートするインボイス制度で負担増となる免税事業者などへの2つの救済措置が盛り込まれた。

1つ目は、現在の免税事業者が課税事業者に転換した場合、転換から3年間は消費税の納税額を売上税額の2割に抑制する。2つ目は、年間の売上高が1億円以下または課

税売上高が5千万円以下の事業者に対して6年間、1万円未満の少額取引についてはインボイスを発行せず帳簿の保存のみで仕入税額控除を認める。

現行制度では、10月のインボイス制度の開始と同時にインボイス発行業者となるためには、3月末までに登録をしなければならないとされている。この点について大綱では、

「柔軟な対応を行う」、「制度移行後においても弾力的な対応に努める」として、期限後の申請にも対応していく方針を示した。


<谷の私見>

ややこしい制度になってきましたね・・・。いっそのこと、免税事業者制度を廃止し、かつ、課税方法も原則課税のみにすればよいのに、と思ってしまいます。

お国が決めることなので仕方ないとはいえ、消費税については国民がもっと声を上げてよいのでは、と思います。


〇企業関係 改正電帳法

2年限定だった宥恕措置 実質的な恒久化

22年1月に施行された改正電帳法では、電子メールなどで受け取った請求書等について紙にプリントアウトしての保管を禁止しているが、中小事業者での対応が進んでい

ないことを受けて、2年間は法違反ではないとみなす宥恕措置を設けた経緯がある。

この宥恕措置について大綱では「適用期限の到来をもって廃止する」と明言する一方で、要件に従って保存できない理由がある事業者については、税務調査に対応できる体制を整えておくという条件付きで、

「保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする」とした。2年間の時限措置だった「宥恕措置」の、実質的な恒久化といえそうだ。

また改正法で定められた検索要件、スキャナ保存要件もそれぞれ緩和され、厳格な内容だった新制度は早くも”骨抜き”の様相を示している。


<谷の私見>

インボイス制度と並び、非常に質問の多い法改正ですね。なかなか中小企業には浸透しずらい、ということで宥恕されています。

電子帳簿保存法は大きく3つあります。1つ目は「電子帳簿・電子帳簿保存」で、会計ソフトで作成している帳簿(元帳、仕訳日記帳など)や、

税務申告書・決算書、注文書や契約書、請求書などです。2つ目は「スキャナ保存」で、オリジナルの紙ファイルをスキャンした際の取り扱いです。3つ目は「電子取引」で、電子データで送受信した注文書、契約書、請求書、見積書、領収書などは電子データのまま保存するというものです。このうち「電子取引」が令和6年1月1日から義務化がスタートし、残りの2つの義務化は未定です。

ですので、まず取り急ぎは「電子取引」のデータをしっかり電子保存することから始めましょう。


〇企業関係 防衛増税

中小法人には500万円の税額控除

政府が掲げる防衛費の増額に必要な代替財源として、法人税にも白羽の矢が立った。黒字法人に課される法人税に、税率4~4.5%の新たな付加税を課すという。ただし中小法人への配慮として、課税標準となる法人税額から500万円を控除する。防衛財源に関する見直しは27年までに段階的に実現するといい、法人増税についても現段階では時期は決まっていない。 


<谷の私見>

個人所得税1%UPと同じで、その法人版ですね。安倍首相の時に法人税引き下げを行いましたが、また引き上げなんですね。

中小企業には配慮した形になりましたが、理念のない政策的な法律改正ですね。


〇企業・個人  税務調査

無申告を厳罰化最高税率は30%

大綱では、無申告は「仮装・隠ペいを伴わないため重加算税の対象とならず、税に対する不公平感を大きく損なう」として、無申告に対する厳罰化を盛り込んだ。

無申告加算税の税率は現在、原則15%で税額50万円を超える部分については20%となっている。これに加えて24年1月からは、税額300万円を超える部分について30%に引き上げる。

さらに前年度と前々年度に無申告加算税(これに代わる重加算税含む)を課された納税者が期限後申告や修正申告などをしたときには、その申告にかかる無申告加算税や重加算税を10%加重する。そのほか、問題視されているものの今回は見直しの対象とならなかった、税務調査への非協力、申告後の仮装 ・隠ぺい、不正への第三者による加担行為などについても、「中期的に検討していく」としている。


<谷の私見>

無申告、仮想隠蔽は確かにダメですね。これは私も同意見です。


〇企業・個人 車の税金

環境基準引き上げ 半導体不足で足踏み

重量税のエコカー減税について、半導体不足などの状況を踏まえて、現行制度を23年12月末まで維持する。大綱ではこれを「異例の措置」としている。その後、24年からエコ基準を引き上げた上で、維持期間を含めてエコカー減税の制度期限を3年間延長する。基準引き上げに際しては激変緩和措置も講じるという。

自動車取得税に代わって導入された環境性能割では本来、22年度末が税率区分の見直し時期に当たる。ただこちらもエコカー減税と同様、半導体不足を受けて税率区分の見直しはスキップするという。次回の見直しは3年後となる。エコカー減税と環境性能におけるクリーンディーゼル車の取り扱いも、23年末までは現行のままとし、24年1月からガソリン車と同等の扱いに改めることを盛り込んだ。


<谷の私見>

環境に配慮するのはとても素晴らしいことだと思います。上記記事にあまり関係ない話かもしれませんが、電気自動車だって、電気を作るのに化石燃料や原子力を使っていて、

さらに今ある自動車をガソリン車から電気自動車へ変更するだけでもかなりの環境破壊のような気がしますが。結局、環境もビジネスなのかなと思ってしまうのです・・・。

 


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  • 第34号 新たな金還付スキームと当局の対応NEW!
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