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<所長のミカタ 2022年10月号 8面>
いわゆる「節税保険」について、国税・金融の両庁がタッグを組んで抜本的な取り締まりに乗り出した。「節税保険は租税回避」といった認識のもと、
不適切な節税スキー厶を含む商品が認可されないようあらかじめ照会できる仕組みを構築するという。
すでに販売されている商品についても両庁が合同で保険会社や代理店のモニタリングを実施して「不適切なもの」を洗い出す方針だ。中小事業者にとって力強い味方となってきた生命保険が、大きな曲がり角を迎えつつある。
<繰り返されてきた開発と規制の応酬>
金融庁はこのほど、節税効果をうたったいわゆる「節税保険」の不適切な販売があったとして、マニュライフ生命保険に対し保険業法に基づく業務改善命令を出した。問題視されたのは、かねてより金融庁のターゲットとなっていた「名義変更プラン」と呼ばれる中小事業者向けの保険商品だ。多額の死亡保険金を受け取れる契約を法人名義で締結し高額な保険料を支払うものだが、一定期間を経た後に経営者個人へ名義変更・譲渡したうえで解約すると、税負担の抑えられる一時所得として多額の返戻金を受け取れる仕組みとなっている。金融庁は、マニュライフ生命保険の節税効果を強調した募集活動や商品の開発について「公的保険を補完するという保険本来の趣旨から逸脱しており悪質」と指摘し是正を求めている。
金融庁は近年、「行き過ぎた節税になっている」と問題視して節税保険の規制を強めているが、行政処分を下したのはマニュライフ生命保険が初めてで、生命保険業界にとっては2019年の「バレンタインショック」、昨年の「ホワイトデーショック」に続く3度目の衝撃として注目されている。
19年には、それまで全額損金で処理されてきた一部の生命保険の規制に向け、新たな損金算入ルールが設けられた。金融庁や国税庁の動きが判明したのが2月14日だったため、バレンタインショックと呼ばれている。そして昨年3月には、中小事業者の節税手法として活用されてきた低解約返戻金型の逓増定期保険の取り扱いを見直す通達改正が明らかとなり、こちらはホワイトデーショックと呼ばれた。
<両庁の連携強化で取締り本気モード>
金融庁は7月、保険契約者の保護に向けた節税保険の取り締まりで、国税庁と連携を強化すると発表した。生命保険会社が新たに開発した保険商品について認可するかどうかを決定する「商品審査」と、すでに保険会社や保険代理店を通じて販売されている保険商品の実態を精査する「モニタリング」で国税庁と協調し、節税スキームの照会などを通じて不適切な節税保険を洗い出していくという。規制対象とする生命保険商品について金融庁は「保険本来の趣旨を逸脱して販売され得る保険商品」と定義し、具体例としては個人年金保険を活用した名義変更プランや、払済やを失効を活用して課税を繰り延べられる保険商品などを挙げている。
金融庁は節税保険について「租税回避」との認識で強硬姿勢をとっており、商品審査とモニタリングによる取り締まりが徹底されれば、今後は節税保険の新商品が販売されなくなり、節税効果の見込める既存商品への規制強化も加速するとしている。「商品審査」では、①金融庁から保険会社に対し、国税庁への税務に関する事前照会を促進、②保険会社から同意を得たうえで金融庁から国税庁に事前照会を実施、③事前照会の結果を商品審査の参考情報として活用し、審査内容を国税庁と金融庁で情報共有―といった取り組みを行うという。
節税保険を規制する商品審査では「法人等の財テクなどを主たる目的とした契約又は当初から短期の中途解約を前提とした契約等の保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動につながる商品内容となっていないか」との基準項目が設けられている。しかし金融庁単体の審査では節税商品の洗い出しが十分に行えず、本来規制されるはずの節税商品が認可されて販売開始となってしまい、最終的には通達改正で後出し的に規制が繰り返され、生保各社と加入者に混乱をもたらしてきた。今後は国税庁に事前照会することで、審査精度の改善が見込まれている。
「モニタリング」では、商品審査をクリアして販売開始された保険商品についても、国税庁と金融庁が連携して不適切な節税スキームに利用されていないか継続的にチェックする仕組みを構築するという。具体的には、①両庁の定期的な意見交換により、国税庁から金融庁に対して保険商品に関する節税スキームの情報を提供、②国税庁からの情報や金融庁が独自につかんだ情報を活用しての、保険会社や保険代理店による募集管理体制の整備状況や販売実態のモニタリングなどの実施、③金融庁から国税庁に対し、商品開発や募集現場で利用される節税スキームの情報提供―といった取り組みを行うという。これから新たに販売される保険商品だけでなく、すでに商品化されて市場に出回っているものも含め、これまで以上に国の監視が強くなる。
<経営者の保険戦略見直し時期に>
これまでの節税保険商品は金融庁の審査をクリアして合法的に供給されているため、事後的に規制が入ったとしても、販売されている間に購入しておけば節税効果を得ることができた。そのため、節税効果に魅力を感じた顧客としては、規制前に滑り込みで加入する「駆け込み節税」も可能だった。しかし今後は、商品審査の段階で国税庁が関与して節税スキームに活用されていないか精査するようになるため、ある生命保険会社の商品開発担当者は、「節税効果を打ち出した商品の開発が難しくなり、これまでのように節税保険そのものが市場に出回らなくなる可能性がある」と指摘する。
生命保険が果たす最大の役割は昔も今も万が一のときの保障であり、家族の生活や事業のための資金を維持する重要なアイデムだ。
経営者の生命保険戦略を改めて考えたい。
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